調布市長選挙応援後記
メンバー投稿 執筆:小川奈穂子 編集:けいちん
*佐久間裕美子より:Sakumagではメンバーの投稿を募集しています。身のまわりの小さな革命などについて書きたいことがある人はお知らせください。今回は、調布市長選に参加したnanaさんこと小川奈穂子さんが振り返りを書いてくれました。
調布基地跡地留保地に立つ木々。
Photo by nana
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【調布市長選挙2026年7月5日投開票】
6期24年の長きにわたり市長を続けた長友貴樹氏が立候補せず、新市長誕生必至の選挙に。市長と蜜月だった調布市議会最大会派チャレンジ調布所属の市議会議員井上耕志氏、4年前の市長選に立候補して敗れたのち市議会議員となった磯辺隆氏、生活者ネットワーク所属の市議会議員木下安子氏、自民党の推薦を受けた林明裕氏の4候補で行われた。なお、調布市の市長に女性が就いたことはいまだかつてない。
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初めて選挙応援というものを本気でやった。
きっかけは大型連休前に見つけた、木下安子さん市長選出馬意向を表明の報。市民派市議会議員として存在は知っていたが、物静かな印象の人だったので、市長に立候補、と聞いて少し意外に思いつつ、5月6日、市政報告会に出向いた。
会場につくと、若き気候アクティビストの山本大貴さんが司会を務めており、他にも気候変動関連の活動をしている人の顔を運営側に見つけ、好感触。
さて、会が始まる。木下さんがたっぷりと時間を取って政策を話すのを注意深く聞いた。改憲反対の立場表明があり、気候変動の話から性的マイノリティの権利を含むジェンダー平等の話や社会の障害の話、家族介護者支援の話、子どもの権利、外国ルーツの人々が地域で安心して生きるための支援の話など話題は多岐にわたった。選挙に出る人が掲げがちな、票田に直結するようなトピックに偏らず、性的マイノリティや外国籍の人々へ言及があるところに、人権意識がつまみ食い的なものではないことが垣間見えた。
個人的にも少し言葉を交わして、少なくとも、前回ゆるく応援した磯辺氏よりずっと市長にふさわしい人だ、と思ったのを覚えている(磯辺氏については、「自然が大好き」なのはよいのだが、市長選に落ちた後に市議となった選挙の運動中、泡まつ候補含む男性候補者ばかり5人で肩を組んだ写真をSNSに挙げているのをみてドン引きして以来、生暖かい目で見守っていた)。応援者登録フォームの「できること・やりたいこと」にできるだけ多くチェックを付けて送信し、帰路についた。
ほどなくして木下さんの運営から連絡が入る。若い人の意見を取り入れたい、と政策チームに招かれ、会議に参加することに。意見を取り入れてもらえて、それが応援にもなるならうれしい。しかし、わたしは41歳で、若い人枠でいいのか? というところに一抹の不安も。
選挙に向けてやることは無限にあった。
政策パンフレット、ポスターは、告示前と告示後で掲載できる内容が変わる。告示前はあくまで選挙とは無関係の政治活動扱いなので、「市長選挙」「候補者」などは禁句。逆に、告示後は枚数限定で作成する「証紙ビラ」(※1)や掲示板に貼る「候補者ポスター」には候補者であることも名前も顔写真ももちろん載せられるが、それ以外には顔も名前もないものしか使えない。候補者のシルエットがついたビラが作られる背景にはそういうルールがある。そんなわけで、多種多様な印刷物の記載内容やデザインを決めるのに喧々諤々。かなりの時間を要した。朝と夕方の街宣の時間と場所を決め、集会を企画し、SNSで拡散。街宣カーの準備や運転手の時間割、ポスティングの担当割……大量の物事を事務局長が懸命に、しかし的確に采配していった。
彼女は60代で、娘さんの出産に備えて仕事を辞めてちょうど時間ができたタイミングだったので、事務局長を引き受けたのだとか。選挙の経験はないのだという。その事務局長をリーダーに、市議の選挙を経験してきた人が数名と、歴代様々な市長選候補者の応援をしてきた市民、今回初めてかかわる人が集う、選挙と聞いて想像するよりもずっと和やかなチームだった。
知識とアイディアを出し合って、公職選挙法の謎ルールを逐一確認しながら、何とか進める。平均年齢が高く、SNSを使う人はいても、頻繁に発信する人は少数で、気まぐれにInstagramやThreadsに投稿する程度のわたしが「SNS得意な人」とみなされて、SNSでの広報全般を担当するICTチームにも加わることになった。公式ホームページは候補者自らが作成、スピーチの動画はICTチームの主要メンバーである夫婦がしっかり撮影して、SNSに投稿してくれているが、丁寧に編集するからスピードはなかなか上がらないよう──。そんな感じの応援団。
普段の仕事と並行して選挙応援もする嵐のような日々が始まり、途中で日記が途絶えているので、記憶を頼りに書いてみる。
まず、事務所が自宅の近所に決まり、週2で夜の事務所番を引き受けることになった。
5月25日:プロモーション動画の撮影に参加した。木下さんと一緒に歩く映像と、ちょっとしたコメントと決め台詞を撮る。
6月6日:事務所開きの小イベントで応援スピーチ。リベラルなご近所さんたちとお知り合いになった。この頃から朝夕、市内の駅前などでの街頭宣伝が始まったので、仕事の合間を縫っては極力参加した。街宣ではUDトーク(文字起こしアプリによる情報保障)を提供した。そうして木下さんのスピーチを横で聞くうちに、彼女に対するイメージが変わった。淡々としているが、強い正義感を秘めた、マニアックな、それでいてユーモアのある実像が見えてきた。
6月21日:キックオフ集会を頼れるMさんとともに企画、司会。みんなでアイディアを出し合い、手話通訳、UDトーク、キッズスペース、筆談の道具などを用意。パレスチナに連帯するミュージシャンによるオリジナル応援歌の演奏や、みんなの声を書いた葉っぱ型の付箋で完成させる大きな樹など、いい意味で選挙っぽくない、楽しいイベントになった。市外の友人にも助けてもらい、心強いことこの上なかった。
その後も、応援メッセージを募ってホームページに載せよう、とか、最終日は動画編集の時間がないからYouTubeのライブ配信をやってみよう、とか、思いついたことを口に出すと採用されて、未経験だけど即実行。今振り返ると、こんな速度感はいったいどうやってこなしたのか分からないほど。だけどとにかく楽しかった。
大きかったのは杉並区長選挙の存在だ。調布の告示日は杉並の投票日。1週間遅れで追いかける日程。目の前に地方自治が生き生きしている姿があった。SNSでの個人個人の無数の切実な呼びかけ、多くの人が集まった街宣やイベントの盛り上がり、岸本聡子さんの圧勝、そして、岸本さんの誠実な言葉たち。すべてが元気の素になった。
結果は、もうみなさんご存じの通り。木下さんは得票数3位での落選となったが、見方によってはあと一歩だったともいえる。選挙期間中に自民党国会議員生稲晃子氏を横に座らせて「私の第二婦人」と発言した人が地元の市長になり、大規模な樹木伐採を伴うFC東京に有利すぎる開発(※2)を止める難易度が高くなり、あらゆる政策が望まぬ方向に行きそうだ、という現実はずしりと重たいが、わたしはいざというときの馬鹿力の出し方を習得したような気がする。がぜん市政に興味が湧いたし、市民としてパワーアップした感もある。というわけで、選挙応援、おすすめです。
※1 告示後、投票日前日までの選挙期間に選挙運動として配布できるビラ。枚数や配布方法が厳格に規定されており、一枚一枚、選挙管理委員会から受け取る証紙を貼った上で配布する。
※2 調布基地跡地留保地の「公園」整備計画。FC東京は、この計画のために市が国から購入および無償借用する用地の約半分に練習用サッカーコートやクラブハウスを整備し、それを市に寄付するが、これは通常の寄付ではなく「負担付き寄附」。FC東京が優先的に利用することと、市がFC東京に管理を委託することが条件となる。その結果、FC東京は市から管理委託費を取れる上、固定資産税の支払は発生しない、というアンバランスなスキーム。市民の意見を聞かずに重要な決定をしてしまう不健全な市政の象徴として、木下さんは計画見直しを訴えている。
nana@小川奈穂子


