週報 5/20/2023
旅から戻ったあとの雑事やたまっていた仕事に追われていたら、急に疲れと俗に更年期障害というやつに襲われて自分を甘やかしているとき、国民民主党と維新の会が「シスジェンダーに配慮した」LGBT法の対案を検討しているという報が流れてきて目が醒めました。
この前から、「差別はない」と主張する「当事者」の方たちが登場して頭を抱えていましたが、制度による恩恵だけ比べても厳然たる差があることがわかります。
参考:同性カップルと事実婚、法律婚は、権利がこんなに違う一覧(幻冬舎plus)
そこに登場した国民民主党と維新の案。自民党案より酷い案が出てくるなんて、誰が想像できたでしょうか?
私たちが生きている社会には、たくさんのマジョリティ/マイノリティを分ける軸がありますが、シスジェンダーが世の中の圧倒的マジョリティであり、この社会がシスジェンダーの都合で作られてきたことは、みなさんご存知の通りです。LGBTという、私たちがすっかり慣れたこの単語で括られてはいますが、この4つの中でも、バイナリーなジェンダーに当てはまらない、生まれたときにアサインされた性とは違う性を自認する人たちは、シスジェンダーが被らない様々な不利益や差別、困難を抱えさせられて生きています。
アメリカで、同性婚が合法化されてからLGBTからTを切り離して攻撃する動きがありました。日本でも、以前から、「女性」から「トランスジェンダー女性」を切り分ける風潮に警戒を抱いてきましたが、いよいよ、男性に対してマイノリティである女性を「守る」という大義が、さらなるマイノリティであるトランスジェンダーへの差別解消を否定するための道具として使われるようになってしまいました。
もうひとつ看過できないのが、代理母出産に対する反対が、LGBT法案反対のロジックとして使われている点です。同性愛者、特にシスゲイの男性のカップルが悪魔化されてバッシングされていますが、代理母の制度の利用者の圧倒的マジョリティは異性愛者であるにもかかわらず、「LGBT法案が通ればゲイカップルが代理母制度で子どもを持つ」という話がまことしやかに流されているのです。
こうした恐怖キャンペーンがあったからこそ、自民党・公明党案に乗らなかった国民民主と維新が「シスジェンダーに配慮」というとんでもないことを言い出したわけですが、「G7で同性婚を認めていないのは日本だけ、G7までになんとか法案をまとめよう!」が起点だったはずなのに、ネットの言説に惑わされて、差別いいよ法案になろうとしているなんて、どんな地獄でしょうか? この流れを変えるためには、多くの人によるネットでの反対表明が絶対的に必要です。
梅村みずほ議員による、事実に基づかないウィシュマさんへの「詐病」の糾弾は、被害者を冒涜する醜いものでしたが、内容を事前にチェックしていた維新が、梅村議員に罪をかぶせて更迭したことを見て、私はついに維新も国政の現場で世論の潮目を見始めたと思いました。国民民主党はもとより日和見主義です。みなさん、ぜひ大きく声をあげていただければと思います。
最近、善意の人たちが恐怖キャンペーンに惑わされて、実はトランス差別なことを言いだしてしまう、という実例が、私のところにもたくさん報告されています。
私がトランス差別を絶対に許してはいけないと思っているのは、自分の人生にトランスジェンダーの人が存在するからだけではありません。トランスジェンダー差別は、富を支配する男たちが牛耳る家父長制度のミソジニーや性やジェンダーの支配を、そのまま横滑りさせるものだからです。
男は女になれない、女は男になれない、トランスジェンダー女性は男の権利を持ちながら女性の権利を奪おうとしている、という言説自体に、誰が女か、男なのかを判断する審判を自認する、支配的で傲慢な姿勢があります。こうした言説は、私たちの社会に生きるトランスジェンダーの人たちの現実とはあまりにかけ離れています。
なお、アメリカでは、シスジェンダーの女性がトランス女性と間違えられてトイレから追い出されそうになる、などの事件も起きています。外見で「トランスに違いない」と思い込んだ女性が通報したからです。勝手に人の性をジャッジしていいと思い込んだ市民審判がトイレの取り締まりを始めることを許したら、女性だとわかるかっこをしろ、という展開にもなりかねません。
もし、こういう考えに流されそうになったら、当事者の言葉に耳を傾けてください。もし、そうした考えを耳にすることがあったら、できる範囲で異論を差し挟んでいただきたく思います。当事者たちは、前以上に恐ろしい気持ちで生きているはずです。
日本で買ってきたこの2冊に紡がれる言葉たちに救われ、心を寄せています。
📙われらはすでに共にある(反トランス差別ジン)
📗未来の男性へーIWAKAN書簡集
ところで、手術をしていないのにその性を名乗るな、という意見を見かけることがありますが、手術にはさまざまなハードルがあります。
青山さんという方が手術をするためのクラファンが発足しているとのお知らせを頂きました。これを読むと、シスの人たちが簡単にいう手術がどれだけ大変なことかわかります。
👉 アメリカでWe Are Learningの販売を始めました!(在庫がある間だけ)
👉 Save The Date! 日本時間5月12日21時から、ヤマザキOKコンピュータと、編集者や文筆業者のためのチャットGPTを使った公開企画会議的なトークをやることになりました。チケット販売については後日お知らせします。
👉 Climate Integrateがこれからの国家ビジョンを画像にしていました。
ここからはコラム形式にて。
活動家と呼ばれて
ライターたちのストライキ
BuzzFeed とVice Media の凋落
移民・入国政策と資本主義
路上生活者の死:ジョーダン・ニーリー
食料のアップサイクル
新プロジェクト!その他のお知らせ
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