Sakumag週報 3/7/2023
以前からたびたび書いてきましたが、このところ、日本のトランスジェンダーについてミスインフォメーションが危険なレベルに達してきています。
トランスジェンダーの人々は、もう長いこと、私たちの社会の中に存在してきました。それなのに、LGBT法案や同性結婚が国会で議論される今のタイミングで、トランスジェンダーに対する恐怖を煽られているのはどういうことでしょう?
子どもたちの安全を脅かす存在である、怖いという気持ちを表現したら差別と言われることになる、そういう誤情報がまことしやかに語られています。今起きていることは、イギリスやアメリカのラディカル・フェミニズムと宗教保守の連合によって始められ、その後、こうした勢力の影響を受ける人々によって日本に輸入され、特に子を持つ母親をターゲットに意図的に行われてきた情報戦と扇動のたまものです。
しかし、これは日本特有の事象ではありません。アメリカでは、2015年に最高裁判所が同性婚が合法化されたことによって、「結婚は男と女の間で行われるものである」という保守派の従来の主張が法的な裏付けを失いました。そこで彼らは、戦略を変えました。従来のバイナリーのあり方に当てはまらないジェンダーや非異性愛を包括しようとしていた教育を改革し、また、トランスジェンダーが受けてきた医療や福祉を取り上げようと画策しました。これにはLGBTの運動からT を切り離す目的もありました。LGBTの中でも、トランスジェンダーがもっとも人口も少なく、攻撃しやすいからです。そして、その闘いにジョインしたのが、「生物的に」(つまり、生まれた時に)女性でないトランスジェンダーは女性ではないという立場のTrance Exclusionary Radical Feminist (TERF)と呼ばれるフェミニストたちです。宗教右派とフェミニストの組み合わせは奇妙に思えるかもしれませんが、過去にも反ポルノなどで手を組んだこともあり、それぞれ強固な支持基盤を持っているので、影響力は絶大です。この連合の戦略は、シスジェンダー女性とトランスジェンダー女性の人権が衝突するかのような言説を煽り、トランスジェンダーを孤立させることです。
インターセクショナリティという言葉の重要性が叫ばれて久しいですが、いま一番交差性を必要としているのが、トランスジェンダーが恐ろしい存在として描かれ、迫害されている現状です。そして残念ながら、恐怖キャンペーンの扇動を信じてしまった人たちと、すべての人に安全な生活が保障されると信じる人たちの間で分断が起きてもいます。こうした状況が、まさにこのキャンペーンの「思う壺」な状態を作り出してしまっているのです。
この一連の流れを危惧する人たちが、日々声を出してくれていますが、どんどんミスインフォメーションは広がっています。
もし、このメールを受け取っている人で「そうはいっても心配だしなあ」という人がいたら、以下のスレッド/記事を読んでみてください。
法律実務の現場から「TERF」論争を考える(前編) 仲岡しゅん(WAN)
👉 世界で初めてトランスジェンダーであることを公表した政治家(市長/議員)で、ニュージーランドの先住民マオリでもある、ジョージナ・ベイアーさんが65歳で亡くなりました。Rest in Power。
👉 ウィシュマ・サンダマリさんの事件によって廃案になったはずの入管法改正案ですが、前回の廃案と骨子の変わらないまま、またも閣議決定がなされました。反対の署名はこちら。
👉 「こんにちは未来」リニューアルに向けて、ジングルを募集しています。3月14日の締め切りまであと1週間です!
今週のコンテンツ:
FOXニュースとドミニオンの法廷戦争が意味するもの
馬奈木厳太郎弁護士の件
元同僚との再会
ただ今制作中!「We are learning」気候変動についての勉強本
Sakumag Slackから
ここからはコラム形式でお届けします(ここのところ、ニュースレターのスタイルが揺れていてごめんなさい。まだしっくりいく形を模索中です)。
先日、キヤノンのシンクタンクが発信するトンデモ科学論を入り口に、企業による気候変動懐疑論の流布をテーマにしたポリタスでも、情報が事実かを見極める際に、
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