Sakumag週報4/25-5/1/2022
山奥の猫シッターライフ
PACHINKOを観て考える
イーロン・マスク問題
1月6日真相究明
ウクライナ「勝てるかも」論
ホワイトハウスの特派員ディナー
フロリダ対ディズニーの戦い
その他お知らせ
はっと気がつけばもう4月が終わってしまいました。年の3分の1が終わってしまったと思うと、しばらくニューヨークにいる間に、ルーティーンを取戻し、心静かに過ごそうと思ったついでに420(大麻の日)もアースデーもメーデーも、あまり積極的に発信することもなく過ぎていき、今日はちょっぴり「やっちゃった!」という気持ちですが、「マイペース」と「焦らない」も課題なので、自分をポコポコと殴らないように努めています。
同時にこのところ、自分が今果たすべき役割はなんなのだろうか?ということを突き詰めて考えてもいます。運動にまつわるあれこれにエネルギーと時間を大量に注いだ2021年は、本を出せないまま終わり、今年こそは書きためている文章からせめて一冊くらいは、と思うと一方で、目の前には課題や問題が山積みで、いまひとつ執筆に集中できない自分がいます。
先週から2週間、友人で大家さんでもある「おねえちゃん」の家で猫シッターをしています。アメリカには、ギャラなし/食事を提供するペットシッターのマッチングサービスがあるのですが、行き違いがあったらしく休暇の直前にシッターがいないことがわかり、その間、私が家に滞在することになったのです。「自分の家がいちばん」派として、最初は「探すの手伝うよ!」と言ったのですが、勝手知ったる家でもあるし、たまには猫と一緒に生活するのもよかろうと結局、引き受けることにしました。やってみると、今まで自分の頭でこんがらがっていた事象を整理することができるようになって、たまには環境を変えることも大切なのだったと思い出しています。とはいえ、ゴールデンウィークで時間はあるのに、円安の緊縮財政でモンタナにパートナーを訪ねることも諦め、「遊びにいくよ~」と言っていた友人たちも最近ではすっかり仕事が忙しいらしく、ひとりきりで淡々と過ぎていく時間に不安になる瞬間もあります。2006年頃だったか、カリフォルニア北部の山奥に住む詩人のゲーリー・スナイダーを取材させてもらったことがありました。日本人の妻に先立たれたスナイダーの山奥生活を見て、若かかった私は「寂しくないだろうか」と思ったものですが、彼の散文集には、楽な思いをしたくて山奥に住むことを決めたわけではない、という意のことが書いてありました(手元に本がないので正確な文章ではないです)。そんなことを思い出したのは、今、何のために自分はわざわざ「ひとり」であることと直面する生活を選んでいるのだろうか、と考えた時です。その現実的な答えは、「ひとりで静かに文章を書く時間がほしかったから」なのですが、「最終的にひっそりひとりで暮らす」ということに対する憧れから、準備を整えておきたいという気持ちもあるのかもしれません。
この家にはバッチリApple TVが入っていて、前から観たいと思いつつ、すでにサブスクしているプラットフォーム(Netflix、Hulu、HBO)のひとつを切ってからにしようと思っていた「PACHINKO」を一気観しました。時系列で進んでいく書籍版(英語版をオーディオで聴いた)とは、時代が交錯しながら進んでいく展開も、細かなディテールもずいぶん違うのですが、日本の帝国主義によって日本に連れてこられた在日韓国/朝鮮人の、それも女性を中心にした物語が、メインストリームのプラットフォームで配信されていることにまず感嘆します。戦中から戦後までの日本の時代背景や在日コリアンの苦境が物語として画面に映し出されていること自体が時代が進んだことの現れでもあり、また他人種に比べて多様性が高い割には雑に括られることの多かった「アジアン」の本来のレイヤーが個体として扱われる時代の前兆でもあると思うからです。もちろん「アジアン」の中には、まだ正当なレプレゼンテーションを受けていない少数民族も多数存在するわけですが、今、西側のコンテンツの作り手がアジアが物語の宝庫であることに気がついたような気がするのです。
👉 前回の日本滞在で知り合ったミシェル・リーが最近、韓国に暮らす脱北者コミュニティについて記事を書いていて、これもまた「これまで西側ではほとんど語られなかったストーリー」だと思いました。Surviving the ‘time machine’: Helping North Korean defectors to the South(The Washington Post, Audioあり)
「PACHINKO」が秀作であることは間違いないのですが、一番大きな違和感は、日本で育った在日コリアンの役なのに日本語が拙ない役者さんが多かったことです。これは在日コリアンの役柄だけではなく、日本在住の非日本人の役柄でも見られ、またHBO制作の「Tokyo Vice」でも似た現象が見られました。こういうオーセンティシティはきわめて重要であるはずですが、欧米オーディエンス中心主義的には大した問題ではないのでしょう。最近、ハリウッドや制作業界では、マイノリティ性を持つ役柄は、そのマイノリティ性をもって生きている役者に、というプッシュもあるのですが、それが広く行き渡るにはまだまだ時間がかかるのでしょうか。けれどこうしたことも時間が解決してくれるような気がしています。
今回初めてApple TVでアクセスできるタイトルをざっと眺めたわけですが、なかなかに豪華で、最近Netflixをやめた友人が、以前ニュースになったトランスジェンダー従業員の待遇をめぐる会社の決定がまったく支持できなくて、という裏話をしてくれたこともあり、今回の支払いを最後にNetflixを解約することに決めました。それに際し、トランスジェンダーの従業員をめぐる対応についてのコメントを書きました。また、ちょうど解約してしまったタイミングで、韓国人の慰安婦の存在を否定する登場人物たちによる訴訟によってしばらく非公開になっていた映画「主戦場」のミキ・デザキ監督が、Netflixへのリクエストを呼びかけていたので落胆しかけたのですが、リクエストは会員でなくてもできるようです。みなさんも是非やってみてください。
Keep reading with a 7-day free trial
Subscribe to sakumag to keep reading this post and get 7 days of free access to the full post archives.