Sakumag週報9/26-10/1/2022
ここのところずっと「神様」のことを考えています。
石原海さんという監督の「重力の光」をオンラインで鑑賞させてもらったからです。NPO法人抱樸の主宰者である奥田知志さんが牧師を務める北九州のキリスト教会を舞台に、そこで暮らす人々による受難についての劇をめぐって展開する物語です。(東京では終わってしまったようですが、その他の地域ではまだご覧いただけるようです)
家ではお経を読み、学校では聖書を読まされながら育った私は、とにかく宗教には懐疑的です。かつては憎んでいたと言ってもいいでしょう。宗教は人間たちが作った物語であり、人間たちが自分たちのアジェンダを追求するために推進しているのだと思ってきました。聖職者たちの言うことと行動、寺院に停まる高級車などに矛盾を見たし、近所や親戚、友人宅などにいた新興宗教にハマる大人たちのことをカモにされていると悲しく思ったりしてきました。
世界には13億以上のカトリック教徒がいるそうです。アメリカでは国民の20%程度と推測されていますが、政教分離の原則があるにもかかわらず、なぜだか裁判所で手を置くのは聖書だし、今、女性の中絶の権利と自由が保守州で奪われてしまったのは、命は神に属すると考える人たちの運動によるものです。トランプ大統領が選挙に負けた時、彼を救世主に見立てる人たちが「世紀末」に備えて武器や食糧を買い漁っていたし、今、アメリカではクリスチャン・ナショナリズムと呼ばれるキリスト教右派の台頭が問題になっています。
こう書いてみると、私が疑いを持っている対象は、教えではなく、それを実践しているはずの人たちだということに気が付きます。
科学をキリストが人間の罪を背負って死んだのだとしたら、そしてそれが人間に救いを与えているのだとしたら、なぜその使徒となる人たちが他者を攻撃したり、キリスト教の教えを武器化するのか。神様が本当にいるのだとしたら、なぜこの世の中は、衝突や苦しみにあふれているのか? 科学的に不可能なことのために、なぜ人は祈るのか。こうした「理解できないこと」を消化できないできたのです。
前置きは長くなりましたが、「重力の光」を観て、初めて神様という概念が人を救うというコンセプトに現実のこととして理解できた気がしました。人間は生まれる場所は選ぶことができません。何かのめぐりあわせで特定の場所に産み落とされ、有無を言わされないまま、人生という作業に従事することになっています。誰もが初めて体験する「人生」をやりながら、自分の道を歩いていく過程で、大なり小なりの傷を負ったり、喜びに出会ったりするわけです。人類の歴史は、傷を負った人が人を傷つけるという連鎖の繰り返しで、現世の苦しみ、人を傷つけた罪や自分の過去と折り合いをつけ、ともに生きるための拠り所として、神はそこにいるんだろう、と。
それでもやっぱり「神は存在するか」にこだわってしまい、キリスト教2世の友人にラインを送りました。「神様いるって思う?」と。答えは「いないと困る」だったのですが、それとともに書かれていたことに心をつかまれました。
「イエスキリストが、十字架にかけられる時に「我が神、我が神どうして私をお見捨てになったのですか」と絶叫して死ぬのですが。そういう深い絶望と共にいる神というイメージですね」
深い悲しみが救いに変われることができるのだとしたら? この苦しみにあふれる現世に「絶望」を引き受ける神がいる、と信じなけば前に進んで行けなくことが自分にも来るかもしれない、と。そう考えると、神様がいるかどうかを突き詰めることに意味はないのではないかと。
自分の偏見や凝り固まった考えに違う光を当ててくれたこの作品に感謝しています。
Sakumagでは、今、We Act!の第3弾を準備中です。昨今の円安で、プロジェクトを個人的に支えることができそうもないので、Slackの仲間たちに協力を仰ぎ、クラファンを実施することになりました。10月7日にローンチします!
テーマは「男性特権」。コンテンツのひとつとして、現在、「男性特権」についてのアンケートを実施しています。
マイノリティや被支配層が生きるうえで直面する問題について、知ったり、考えたりする必要がないことを「特権」と言いますが、男性だったら考えなくても良いこと、女性や男性でない人たちに課される社会的な負荷について、感じること、体験談があればぜひシェアいただければと思います。
ここからはコラム形式でお伝えします。
季節の変わり目をサバイブするために
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