じぶんごとのWe革命:戦争で後回しにされる気候変動対策。資源価格上昇は再エネへの転換を加速させるのか
★Business Insider Japanで連載中の有料記事(4月1日配信)を転載しています。文末にお知らせがあります。
ロシアがウクライナに侵攻して1カ月以上が経つ。アメリカ政府の見通しでは72時間以内に陥落すると言われていたキーウ(キエフ)は今もウクライナ領のままで、両国による停戦交渉も設けられているが、どのような展開になろうとも、世界が侵攻前の状態になることは考えにくく、先行きは見通せない。
戦争は、これまでこの連載で書いてきた社会のイシューを加速度的に悪化させる。市中の戦闘は現地に暮らす人たちの医療や食糧へのアクセスを妨げ、人道的な危機的状況を作り出している。戦闘や強制的な避難によって真っ先に脅かされたのは、子ども、老人、障害者、女性などで、家を追われた新規のウクライナ難民の数は400万人を超えた(3月30日現在)。そして既存のジェンダー規範に沿って、成人の男性たちは戦いに駆り出されている。
影響を受けるのは戦地の当事者だけではない。グローバリゼーション時代にヨーロッパと旧ソ連領地の境に存在するウクライナが戦地になったことで、国際的な交通網の一部が遮断され、物や食糧のサプライチェーンにも影響が出ている。さらに欧米諸国をはじめ、多くの国が資源国であるロシアに対する経済制裁を敷いたため、エネルギー市場は乱高下を繰り返している。
これによって侵攻前からパンデミックによってすでに上昇基調にあった世界各地のガソリン価格も当然上がり、ガソリン代が上がれば物価は必然的に押し上げられる。金属をはじめとする商品相場も上昇し、さまざまな業界に広く影響を及ぼし始めている。
拡散された企業リストの波紋
こうした現状が示すのは、グローバリゼーションによってできた複雑なシステムの綻びだ。パンデミックの初期に起きたサプライチェーンの混乱が、再び規模を拡大している。こうした事態が起きるたびに、製造業の可能な限りのローカリゼーションが叫ばれ、製造拠点をより近いところに移す動きもある程度見られるが、世界全体を見ると、一度できあがってしまった巨大で複雑なシステムを書き換えることは容易なことではない。
比較的あっさり完遂した2014年のロシアによるクリミア侵攻と、今回のウクライナ侵攻の最大の違いは、国際社会の反応だろう。ゼレンスキー大統領率いるウクライナ政府のコミュニケーション作戦が功を奏していることもあるが、経済制裁の規模や経済界からの反応の速さが圧倒的に違った。
これまで中立を貫いてきたスイスがロシア関係の資産を凍結したことや、エクソンモービルやBPといったエネルギー企業が早々とロシア企業への投資を引き揚げたこと、情報規制に腰の重かったメタ(旧フェイスブック)、YouTubeを運営するグーグル、ツイッターなどがロシアの国営メディアの関連アカウントのマネタイズ機能を停止したり、アカウント自体を停止・凍結したことも、特筆すべきポイントである。逆にAirbnbやAT&Tは、ウクライナへの無料サービス提供を発表した。
Keep reading with a 7-day free trial
Subscribe to sakumag to keep reading this post and get 7 days of free access to the full post archives.